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ハサミをキるそらべるの夢

私がみた夢をもとに短い小説を書きます。

少年と父

 

 満月の夜で、あたりがよく見えた。少年とその父は、月の光を浴びながら墓地を歩いていた。

 

「一年なんてものはすぐに経っちまうもんだ。母さんが死んだところで周りの何が変わるってわけでもない、いつものように日々がただ慌ただしく過ぎて行くだけだったな」

 

 そう父は言う。

 

 墓地の入口から母の墓までは少し距離がある。ここは墓ごとに形が同じなので、探すのが大変だと少年は考えていたが、父は迷うことなく進んでいる。

 

「そういえばお前と会うのも久しぶりだな、今日は一緒に夕飯でも食べよう」

 

 父の声は、多分少年には届いていなかったと思う。

 

 父は少年がもう側にいないことに気がついていない。

 

 膝の力が抜け、父はその場に崩れ落ちる。どこの誰のだか分からない墓にもたれた。

 

 父は自分の背中にナイフが刺さっていることに気がついていない。

 

「母さんの....作った卵焼......き?違うな、クルマの運転で..もしようか.....それともお前...が」

 

 墓地の入口で少年が父を振り返る。

 

「強くなれば白黒をつけられる訳じゃあない、白黒つけたほうが強いんだ」