ハサミをキるそらべるの夢

私がみた夢をもとに短い小説を書きます。

クジラの子

 

 砂浜は多くの貝や石を含み、裸足で歩くのは少し痛い。サンダルを履けば良かったと後悔した。

 

 海のシーズンも終わり頃で、日が暮れそうになる今では少し肌寒い、僕の他に人は数えるほどしかいなかった。

 

 ぼんやりと海を眺めていると、沖の方に何かが見えた。

 

 目を凝らしてもよく分からない、大きな何かが海面付近で蠢いている。

 

 次の瞬間、大きな音とともに、海面からそれが飛び出してきた、それは信じられないくらい大きなクジラだった。

 

 クジラはゆっくりと宙を飛んでいた、まるでスローモーションの動画を観ているようだった。

 

 やがて海面にぶつかると、また大きな音がした、爆発音のようにも聞こえた。

 

 クジラが着水したところから沢山の白い泡が噴き出して来る。それは凄いスピードで海面を覆い隠し、やがて海岸まで侵食してきた。

 

 僕の足元も泡だらけになったが、全く感触というものがなかった。

 

 泡で海と陸の境が無くなるくらいになると、僕は一箇所に泡が集まっていることに気づいた。

 

 よく見ると泡は蠢き、何かになろうとしているのが分かった。それはうねうねと意志を持ち、僕にはとても気味が悪く思えた。

 

 それは白い塊ではなく、はっきりと人間の形となっていた。やがて泡ですらなくなり、十歳くらいの人間となった。

 

 あれはクジラの子だ。

 

誰かが言った。いや実際には誰も言ってなかったのかもしれない。

 

 クジラの子はおぼつかない足取りで立ち、歩こうとしていた。

 

 直後、大きな波が現れ、一面の泡をすっかり流してしまった。気づいた時には、クジラの子はもういなかった。